【国家資格】介護士のプロ、介護福祉士の義務と求められる能力

監修者

一般社団法人Create Your Life・CAREPIST COLLEGE 事務局。 当法人・移動介護学校についての受付窓口&CAREPIST LAB.ライター。

介護福祉士は、介護福祉の専門職として昭和62年、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)に定められました。介護の資格には国家資格・公的資格・民間資格などいろいろありますが、介護福祉士はその中で唯一の国家資格です。介護福祉士は一般の「介護士」と何が異なり何を求められているのかをそして、これからの将来性などについて一緒に考えていきましょう。

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介護福祉士とは

1)介護福祉士の定義

昭和六十二年法律第三十号
第2条の2
この法律において「介護福祉士」とは、第42条第1項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者を言う。
1987(昭和62)年、法が制定された当初には国家資格「介護福祉士」について「入浴、排泄、食事その他の介護等を行う」と定義されていましたが、2007(平成19)年に現在の「心身の状況に応じた介護を行う」に見直され、三大介護と言われる「入浴、排泄、食事などの介助」だけが介護福祉士の役割ではないと明記されました。現在は、喀痰吸引等、医師の指示のもとに行われる医療的ケアの記述が加わっています。

2)求められる介護福祉士像

「介護福祉士」に求められる内容も法改正や教育カリキュラムの変更を経て少しずつ変化しています。

①従前

1. 他者に共感でき、相手の立場に立って考えられる姿勢を身につける
2. あらゆる介護場面に共通する基礎的な介護の知識・技術を習得する
3. 介護実践の根拠を理解する
4. 介護を必要とする人の潜在能力を引き出し、活用・発揮させることの意義について理解できる
5. 利用者本位のサービスを提供するため、多職種協働によるチームアプローチの必要性を理解できる
6. 介護に関する社会保障の制度、施策についての基本的理解ができる
7. 他の職種の役割を理解し、チームに参画する能力を養う
8. 利用者ができるだけなじみのある環境で日常的な生活が送れるよう、利用者ひとりひとりの生活している状態を的確に把握し、自立支援に資するサービスを総合的、計画的に提供できる能力を身につける
9. 円滑なコミュニケーションの取り方の基本を身につける
10. 的確な記録・記述の方法を身につける
11. 人権擁護の視点、職業倫理を身につける

②2007(平成19)年

厚生労働省が法改正を踏まえ「介護福祉士養成課程における介護技術に関する教育について」を取りまとめました。その中で介護福祉士養成課程における新たな教育カリキュラムの到達目標は下記のとおりになっていました。

資格取得時の介護福祉士:介護を必要とする幅広い利用者に対する基本的な介護を提供できる能力

1. 尊厳を支えるケアの実践
2. 現場で必要とされる実践的能力
3. 自立支援を重視し、これからの介護ニーズ、政策にも対応できる
4. 施設・地域(在宅)を通じた汎用性ある能力
5. 心理的・社会的支援の重視
6. 予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態の変化に対応できる
7. 多職種協働によるチームケア
8. 一人でも基本的な対応ができる
9. 「個別ケア」の実践
10. 利用者・家族、チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力
11. 関連領域の基本的な理解
12. 高い倫理性の保持

③2017(平成29)年

社会状況等の移り変わりや制度改正等を踏まえ、第11回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会にて「求められる介護福祉士像」がまとめられました。

1. 尊厳と⾃⽴を支えるケアを実践する
2. 専門職として⾃律的に介護過程の展開ができる
3. 身体的な支援だけでなく、⼼理的・社会的支援も展開できる
4. 介護ニーズの複雑化・多様化・⾼度化に対応し、本人や家族等のエンパワメントを重視した支援ができる
5. QOL(⽣活の質)の維持・向上の視点を持って、介護予防からリハビリテーション、看取りまで、対象者の状態の変化に対応できる
6. 地域の中で、施設・在宅にかかわらず、本人が望む⽣活を支えることができる
7. 関連領域の基本的なことを理解し、多職種協働によるチームケアを実践する
8. 本人や家族、チームに対するコミュニケーションや、的確な記録・記述ができる
9. 制度を理解しつつ、地域や社会のニーズに対応できる
10. 介護職の中で中核的な役割を担う
+⾼い倫理性の保持

2019(平成31)年、公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会「介護福祉士養成課程における習得度評価基準の策定などに関する調査研究事業報告書」によると7つのコアコンピテンシー(中核的能力・実践的能力)が介護福祉士として求められています。

コアコンピテンシー 具体的能力
1 介護を実践するための基本的能力 様々な生活背景や多様な価値観をもつ対象に対して、介護福祉の専門職として、人権尊重や権利養護を基盤に人間関係を形成する能力 1.尊厳を保持し、⾃⽴を⽀援する能⼒
2.対象となる⼈の権利を擁護する能⼒
3.意思表示や意思決定を⽀援する能⼒
4.⽀援に必要な⼈間関係を形成する能⼒
2 対象となる人を生活者として理解する能力 介護の対象となる人を⽣活者としてとらえ、身体的・⼼理的・社会的・実存的側面から全人的に理解し、⽣活環境やライフサイクルの観点からも理解することができる能⼒ 5.⽣活者を⾝体的・⼼理的・社会的・実存的側⾯から理解する能⼒
6.⽣活者をとりまく環境を理解する能⼒
7.ライフサイクルの観点から⽣活者を理解する能⼒
3 心身の状況に応じた介護を実践する能力 対象となる人をエンパワメントするかかわりや、対象となる人の⼼身の状況に応じて日常⽣活や社会⽣活を支援すること、障害や認知症あるいは介護予防や人生の最終段階における特定の状態・状況にある人に対して支援する能⼒ 8.対象となる⼈や家族をエンパワメントする能⼒
9.対象となる⼈の⽇常⽣活や社会⽣活を⽀援する能⼒
10.障害や認知症、慢性疾患などのある⼈を⽀援する能⼒
11.介護予防やリハビリテーション、終末期などの状況に応じて⽀援する能⼒
4 多様な環境や状況に対応した介護を実践する能力 介護の対象となる人の⽣活の場や状況に応じて支援することや、安⼼・安全な⽣活環境を整えること、
制度や社会資源を活用して支援すること、災害などの非常事態に対応して支援する能⼒
12.⽣活の場や家族形態・状況に応じて⽀援する能⼒
13.安⼼・安全な⽣活環境を整える能⼒
14.制度やサービスなどの社会資源を活用し、⽀援する能⼒
15.災害などの非常事態に対応し、⽀援する能⼒
5 介護過程を展開する実践能力 知識・技術を用いてアセスメントし、アセスメントに基づき介護計画を作成する能⼒である。さらに、介護計画に対して根拠に基づき⽣活支援技術を適切に実践すること、実践を評価し、評価をもとに改善につなげる能⼒ 16.対象となる⼈をアセスメントする能⼒
17.アセスメントに基づき介護計画を作成する能⼒
18.根拠に基づき⽣活⽀援技術を適切に実践する能⼒
19.実践を評価し、改善する能⼒
6 チームで働くための実践能力 同職種及び他職種からなる包括的なチームで働くため、チームの一員としての役割を⾃覚し協働する能⼒、他職種・機関などと連携する能⼒ 20.チームの一員としての役割を⾃覚し協働する能⼒
21.他の職種・機関などと連携する能⼒
7 専門職として成長し続ける能力 介護福祉士としての専門的能⼒を発展させながら成⻑し続けていくことを意味する。そのために、実践の中で研鑽し研究することや、介護にかかわる情報を適切な方法で発信すること、⾃身の健康を管理することができる能⼒ 22.実践の中で研鑽を深め、研究する能⼒
23.介護にかかわる情報を発信する能⼒
24.⾃⾝の健康を管理する能⼒

3)介護福祉士の義務規定

社会福祉士及び介護福祉士法では、介護福祉士について6つの義務等が規定されています。「介護福祉士」として業務にあたるうえでとても大事な事柄ですので、義務を怠ったり違反した際の罰則も併せて覚えておきましょう。 なお、「誠実義務」と「資質向上の義務」は、2007(平成19)年の同法改正により追加されました。

①第44条の2 誠実義務

ご利用者の尊厳を保持し、自立した日常生活が営めるよう、常にご利用者の立場に立って誠実にその業務を行わなければならなりません。

②第45条 信用失墜行為の禁止

介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはなりません。規定に違反した場合は登録の取り消しまたは期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止を命ずることができます。

③第46条 秘密保持義務

正当な理由なく、業務上知り得た人の情報や秘密について漏らしてはなりません。介護福祉士でなくなった後においても同様です。この規定に違反した場合は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。 また、信用失墜行為の禁止と同様、登録の取り消しまたは期間を定めて介護福祉士の名称の使用の停止を命ずることができます。

④第47条第2項 連携

認知症であることなどの心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければなりません。

⑤第47条の2 資質向上の責務

介護を取り巻く環境の変化による業務内容の変化に適応するため、介護等に関する知識および技能の向上に努めなければなりません。

⑥第48条第2項 名称の使用制限

介護福祉士の資格は、名称独占の国家資格です。介護福祉士でない者は、介護福祉士という名称を使用してはなりません。介護福祉士の名称の使用の禁止を命ぜられた期間中に、介護福祉士の名称を使用した場合、30万円以下の罰金に処せられます。また、2011(平成23)年の同法改正により、介護福祉士の業に喀痰吸引等が加えられたことに伴い、その要件を満たさずに、喀痰吸引等の行為を行った場合にも罰則規定が追加されました。

ここまでは社会福祉士及び介護福祉士法に基づいて「介護福祉士」の定義や資格をもつにあたってのルールなどについて解説してまいりました。守らなければ懲役や罰金の発生するルールも存在します。国家資格である重みが伝わればと思います。さて、ここからは、「介護福祉士」の資格を取得するメリットについてお伝えします。

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介護福祉士の資格を取得するメリット

1)社会的信頼性が高い

介護福祉士になるメリットとして、社会的信頼性が高くなることが挙げられます。介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などから介護支援専門員(ケアマネジャー)まで介護に関連する資格は多数存在しますが、介護福祉士が唯一の国家資格です。介護福祉士を取得していることで専門性の高いスキルを有していることを証明でき、共に働くスタッフやご利用者、そのご家族からの信頼もあつくなります。介護福祉士は定期的に資格を更新する必要はありません。日本全国どこに行っても通用する資格となっています。

2)仕事の幅が広がる

介護福祉士の資格を取得していると、訪問介護事業所における「サービス提供責任者」や「生活相談員」、「フロアリーダー」などの職務に就くことができます。都道府県によっては「生活相談員になる要件」として介護福祉士の資格が含まれる県もあるようです。また、「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の受験資格に「保健・福祉・医療分野での国家資格を取得・登録後、5年間の実務(要援護者に対する直接的な対人援助業務が、当該資格の本来業務として明確に位置づけられていることが必要)という条件が含まれているので、ケアマネジャーを目指すために介護福祉士の資格を取る方も少なくありません。介護の分野でステップアップしていきたいという方にとって、介護福祉士はとても重要な資格になっています。

3)お給料アップ

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると介護職員の平均給与額の状況は下記の表のとおり。

資格を取得することにより、資格手当や処遇改善などの手当によりお給料アップが期待できます。

介護職員の平均給与額

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」より

介護福祉士の責任とやりがい

介護福祉士になると、通常の介護業務に加えてリーダー業務やスタッフ教育など、責任のある仕事を任されることが多くなります。それは、専門知識や技術を有している者としてみなされるからです。介護福祉士になる過程において、専門知識を学び、実務経験を積むことで様々な介護技術を身につけることができますが、介護福祉士だけができる「介護業務」はありません。また施設長や、ケアマネージャー、サービス提供責任者、生活相談員など、施設の運営側にも携わる仕事に就いた場合、国家資格である介護福祉士の資格もあると信頼度もあがります。このように責任ある業務に携われることが増えていくため仕事の面白さや、やりがいも増えていきます。

さらにスキルアップするために

「介護福祉士」の資格を取得したからといってそれ自体がゴールではありません。施設運営などは興味がない、自分は現場がなにより好きだから、それ以上のスキルアップは必要ないとおっしゃる方も中にはいるでしょう。そういう方にこそ考えてほしいことがあります。ご利用者に直接かかわる現場だからこそ常に時代の流れにアンテナを立てて情報をキャッチしていく必要性があるのではないでしょうか?これから介護が必要となる方は必然的に「戦後生まれ」が増えていきます。その方たちは自分たちで「選ぶ」こと知っているのです。考え方も多様化しています。ということは一人一人のご利用者の望む暮らしも様々だということです。だからこそ、新しい知識や技術のインプットが必要だということ。常に学び続ける姿勢が必要なのです。

まとめ

今回は「介護福祉士の義務と求められる能力」についてお伝えしました。社会福祉士及び介護福祉士法定義されているように【専門的知識及び技術】をもって、介護を必要とする人達を心身の状況に合わせて支援することが介護福祉士に求められています。さらに自分ができればそれでよいだけでなく、必要な人達に指導をすることも役割だとも明記されています。介護福祉士として求められる内容は、法改正や教育カリキュラムの変更を経て少しずつ変化していますが介護支援専門員とは異なり「介護福祉士」というライセンスは一度取得したら更新の必要もありません。だからこそ意識的に学び続ける必要があるのではないでしょうか。

介護福祉士の詳しい仕事内容については別記事にて詳しくお伝えしていきます。

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