【拘縮の原因と種類】徹底解説

監修者

介護福祉士養成校に2年間通い、介護福祉士取得後特別養護老人ホームに就職。5年間「なぜこの介護をするの?」「今日より明日の方が良いパフォーマンスができるように」をモットーに仕事をする。そうする中、「施設入居までの在宅生活を知りたい。」と思うようになり、在宅の介護支援専門員となる。担当した方と関係者も含め少しでもより良い生活を出来るように日々技術・知識を高めるため貪欲に学び続ける。

背臥位でベッド臥床する男性のポジショニングのイラスト・フリー素材施設介護でも在宅介護でも頻繁に目にする「拘縮」

実はこの「拘縮」には種類があり、原因も様々です。今回はこの「拘縮」の種類と原因を知っていきましょう。少し感じもあり難しいですができる限り分かりやすく解説していきます。

そもそも拘縮とは?

様々な原因により、皮膚や筋肉、関節などの動きが制限され、動かない・動かさない状態が続くことによって、関節が固まって動かせる領域が制限されることをいいます。

関節の周りには、筋や腱、皮膚などの軟らかい組織(軟部組織)があります。
拘縮の状態では、この軟部組織が変化し、関節の可動域(動かすことができる範囲)が狭くなります。
曲がったままで伸びなくなる状態を屈曲拘縮といい、伸びたままで曲がらなくなる状態を伸展拘縮といいます。

要は、関節(肘・手首・肩など)が固くなって動かない状態ですね。

なぜ拘縮ってできるの?

コラーゲン

コラーゲンと聞いてイメージでは、「関節によさそう」というイメージがあります。

実は、寝たきりで身体を動かさないことで筋肉や軟部組織にコラーゲン(繊維)が徐々に蓄積し、筋肉が繊維化していくことで、柔軟性が失われて引き起こされます。

要は筋肉が固くなり伸びなくなるんですよね。

姿勢

同じ姿勢

これは介護職員の中でも頻繁に言われることですが、「同じ姿勢でずっといると拘縮するよ」ということです。仰臥位(上向き)で寝ていると、足先を伸ばした状態で固まること(尖足)はよくあります。

しんどい姿勢

皆さん、窮屈な体制で寝ると翌朝体がバキバキになっていることや、腰痛の襲われることはないでしょうか?高齢者も同じです。本人にとって「楽な姿勢」というものがあります。しんどい姿勢を取り続けると体に力が入り固くなっていきます。

無理に動かす

これは意外にも、拘縮してきているから「動かして少しでも予防しよう」と思い、肘拘縮している時に手首を持ち動かしてしまい、本人が痛みを感じたり、不安から力が入ると、逆に拘縮を助長してしまいます。

拘縮の種類

介護業界で多いのは「筋性拘縮」「神経性拘縮」になります。その他にもありますのでざっと確認していきましょう。

筋性拘縮

病気やケガなどで寝たきりや安静の状態が続くことによって、筋肉が萎縮死して関節が思うように動かすことができなくなることを筋性拘縮と言います。介護の世界で多くある拘縮はこちらになります。

神経性拘縮

神経性拘縮は例えば脳卒中の後遺症などで神経伝達がうまくいかなくなり、麻痺した側の手や足を動かすことができなくなることによって起こります。脳卒中により麻痺側が拘縮することがここにあたります。

皮膚性拘縮

火傷や炎症などにより、傷跡が残り皮膚が引っ張られた状態で治ってしまい、動かせる範囲に制限ができてい状態です。このような皮膚の変化がおこった場合には、自然に治ることはないので手術が必要になります。手術によってひきつれが治れば皮膚性拘縮も改善させることができます。

結合性拘縮

結合組織性の拘縮は、靭帯や腱などの筋肉同士をつなぐ組織が、癒着したり収縮することによって起こります。何か原因になる病気があるわけではなく、その部位の靭帯や腱を酷使することによっておこります。例えば、手を酷使することで「ばね指」がこれにあたります。

結合組織性拘縮は、関節を動かしたりすることで治るものではないため、医療機関での治療が必要になります。

関節性拘縮

関節性拘縮とは、靭帯や関節を包んでいる柔らかい組織(関節包)などに炎症が起こったり損傷が起こったりするときに起こります。他にも、骨折やねん挫などで長期間関節を固定していたときにも起こり得ます。関節性拘縮も、医療機関での治療が必要な拘縮です。

拘縮しやすい部位

拘縮の起こりやすい部位は「手指・肩・肘・股関節・膝・足首」です。拘縮することでどのようなことが起こるのでしょうか。

手指

脳梗塞後遺症で患側の手を開いたり閉じたりの運動をしないことで、手を開くことができなくなる。指が伸びなくなり握ったままになり、水虫になることがあります。物をつかむなどの作業が行いにくくなります。爪を切ることが難しくなり、時には爪が手のひらに食い込み傷になることもあります。

肘を上げることができることができなります。服を着るときの行為が行いにくくなったり、脇の保清ができないことがあります。無理に動かすと脱臼や骨折のリスクがあります。

腕を曲げ伸ばしができなくなり、食事を摂ることが難しくなったり、更衣時に袖を通しにくいことがあります。

股関節

股関節が拘縮すると、足を開くことができなくなります。入浴動作・オムツ交換の際に鼠径部を綺麗にしにくい等の支障が出ます。

膝が伸びたまま固まる・曲がったまま固まる。このように拘縮するとズボンの上げ下げ、歩行ができない・立位保持ができないなど移動に関して支障が出てきます。

足首

仰臥位でで長期安静にしていると、尖足(せんそく)になることがあります。バレリーナのつま先立ちの状態で拘縮する状態です。こうなると立つことができない、無理に立つと足首の骨折・移乗時に足を床に擦ってしまい骨折するなどの支障が出ます。

まとめ

今回は拘縮んも原因と種類を見ていきました。介護の世界ではよく見る「拘縮」そして種類があることを知っていきました。中でも「筋性拘縮」「神経性拘縮」が多くみられることが分かりました。拘縮すると生活の幅も狭まり、本人のQOLも下がり、介護職員も介護負担が大きくなり骨折のリスクも高くなります。今回は「拘縮」の原因と種類を解説してそのデメリットにも触れてきましたが、次回はそもそも拘縮を作らないためにどうしたらいいのか?安楽な姿勢ってなに?といったような内容の記事を書いていきますので、一緒に学びを深めていきましょう。