高齢者のほとんどの方が持病として持っていると言っても過言ではない「便秘」一言で「便秘」と言っても、原因により対応方法も変わってきます。下剤を服用しすぎて毎日のように、水のような便が出て失便をする。寝ている時に失便をして全身更衣をする。そもそもおなかが痛い。こんな思いをご利用者にさせる前に、色々工夫をして気持ちよく排便してもらえるように、介護職ならではの視点であらゆるケアをしてみませんか?
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便秘とは
2017年に日本消化器病学会関連研究会に属する慢性便秘の診断・治療研究会から「慢性便秘症」の診療ガイドラインが発表されました。
「便秘とは、便を十分にかつ快適に出し切れない状態です。」
今までのように「何日排便が出ていないから便秘」と言うようなことではないということが分かります。
逆に言うと、毎日出ていたとしても「スッキリ出ていない、お腹が張っている・・・」と感じれば、それも便秘といえるようです。
ようするに、「排便に伴う苦痛症状があるか」が重要と言えるでしょう。
便秘が続くとどうなるのか
便秘は老若男女問わず持病として抱えている人が多いです。なので「便秘ぐらい・・・」と軽く見てしまうことがありますが、放置しておくと大変なことになる恐れがあります。
痔…便秘のために便が硬くなると排便時に肛門を傷付けやすくなります。また、いきみによりいぼ痔も大きくなり、排便時に出血します。肛門の痛みや出血のおそれのために便意をがまんしていると、便がさらに硬くなり、状態はますます悪化してしまいます。
脱肛、直腸粘膜脱…便が硬くて排便時にいきむことで痔核かくの血管が膨れ、痔核が次第に肛門の外に出てきます(脱だっ肛こう)。これが繰り返されると、直腸の粘膜も一緒に肛門外へスライドしてきます(直腸粘膜脱)。
糞ふんべんそくせん便塞栓症…便が直腸内に溜まって固まり、指や器具でかき出さなければならない状態です。このとき、直腸の粘膜と便のわずかな隙間から液状の便が漏れてきて、下痢と間違われることがあります。
大腸の潰かいよう瘍・穿せんこう孔、腹膜炎…大腸内に便が滞とどこおっていると、潰瘍ができたり、まれには穴があいて(穿孔)、そこからおなかの中に便の細菌が広がり、腹膜炎になることがあります。
その他…高齢者の場合、認知機能障害(認知症)のような症状が便秘のために現れることも少なくありません。
便秘の種類と原因
①大腸や直腸の働きの異常による「機能性便秘」
最も多いタイプの便秘です。生活習慣やストレス、加齢などの影響を受けて、大腸や直腸・肛門の働きが乱れる結果、起こります。よりわかりやすいように、さらに三つに分けて解説します。
①-1 弛緩性便秘…大腸は、その内容物(食べ物の残りかす=便)をぜん動運動によってコロコロ転がし、少しずつ水分を吸収しながら直腸へと運びます。大腸を動かす筋肉が緩んで、ぜん動運動が弱ま
ると、なかなか便が運ばれないために便秘になります。高齢者が便秘しやすい原因の一つです。また、朝食をとらなかったり、運動不足などの乱れた生活習慣による便秘も、これに該当します。
①-2 痙攣性便秘…大腸のぜん動運動に連続性がなくなり、便の通過に時間がかかり過ぎて起こる便秘です。ストレスの影響が強いと考えられています。
①-3 直腸性便秘…運ばれてきた便が大腸から直腸に入ると、直腸のセンサーが働き便意を催します。そこでトイレに行くと、ふだんは肛門を閉めている肛門括約筋が緩み、排便に至ります。ところが、便意を習慣的にがまんしていると神経の感度が鈍って、直腸に便が入っても便意を催さなくなります。女性が便秘しがちな理由の一つです。また最近、温水洗浄便座の水を肛門の奥まで入れるために神経の感度が鈍り、便秘になる人が増えています。
②便の通過が物理的に妨げられる「器質性便秘」
大腸がんや手術後の癒着、炎症性疾患(潰かいよう瘍性大腸炎やクローン病)などのために、大腸の中を便がスムーズに通過できずに起こる便秘です。女性で、直腸の一部が腟ちつに入り込んでしまう直腸瘤りゅうも、よくある原因です。このタイプの便秘では、まず元の病気を治すことが基本です。
③全身の病気の症状として起こる「症候性便秘」
甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢こうしん進症では大腸のぜん動運動が弱くなり、便秘がちになります。いずれも女性に多い病気です。女性の場合、病気とは別ですが、生理や妊娠中にホルモンの影響で便秘になりやすくなります。このほか、神経損傷や糖尿病の合併症などで、神経の働きが不調になった場合も、このタイプの便秘が起こります。
④別の病気
の薬の副作用で起こる「薬剤性便秘」
抗うつ薬、抗コリン薬(ぜん息や頻ひんにょう尿、パーキンソン病などの薬)、せき止めなどは大腸のぜん動運動を抑えるので、副作用で便秘になることがあります。
引用先:日本臨床内科医会
高齢者が便秘になりやすい理由
・身体内の水分が少ない
→そもそも高齢者の体内の水分量は50%(成人は60%・子供は70~80%)ゆえに体内の水分が少なく便も硬くなりやすい。
・活動量が少ない
→高齢になり外出頻度もへり、日常生活を送る上でも活動量が減ってしまいます。
・筋力の低下
→活動量が減ることで、体を動かす頻度が減り筋力が低下します。そして、排便時に必要な腹筋なども非力になり、排出しにくくなります。
・食事量が少ない・バランスが悪い
→高齢になり食は細くなります。そして食べる食材の種類が減る。簡単に調理できるものや出来合いものを食べることでバランスが悪くなります。
アセスメントの視点
便の状態を知る
引用先:四日市羽津医療センター
服薬内容の確認
現在どのような服薬をしているのか?など看護師と連携を取り確認しましょう。薬の副作用で便秘になっていることもあります。
食事内容
どの様な食材をどの程度摂っているのか、水分量はどの程度摂っているのか。などを確認しましょう。
活動量
日中の活動量を確認します。基本的に横になっていることが多いか?どこかに出かけることはあるのか?家事をしているか?などの確認をしましょう。
筋力
前述でもあったように排便時には「力む」が必要になります。その際に必要な腹筋はあるのか?そもそも便器に座っているだけの体力。姿勢の保持できるだけの筋力があるのか。を確認しましょう。
対応策
服薬内容の確認
服薬に関しては医療職と連携を取りっていきましょう。その際に現状の排便の形状やリズムなどの情報共有をします。
食事内容
肉類は便秘になりやすい食事です。食物繊維の含まれているもの・発酵食品・オリーブオイルなど小腸で吸収されない良質な油の摂取。
活動量が
排便体操というものがあります。一日一回でもするようにしましょう。
筋力
特に便秘と関係が深いのは下腹部にある腹筋である腹横筋というものです
①仰臥位で寝て、手をへその上に置き、お腹をゆっくり引っ込ませ、ゆっくり戻していく。
②仰臥位で寝て、膝を直角に曲げて足を上げて、5~10秒キープする。
まとめ
今回は便秘についての基礎的な知識と、医療的な知識をまとめていきました。ついつい便秘となると、下剤の服用で対応をしてしまうことが多くなりますが、介護職ならではの視点で、食事のことや、日ごろの運動について着目して、本人の持てる力を使い排便できるように支援できることがある。ということを知っておきましょう。今後便秘の種類によって支援の方法や医療との連携についても解説をしていきますので、ご興味のある方は是非当コミュニティにご登録ください。