高齢者介護の仕事をしていると、支援している方々の中には必ずと言ってもいいほど頻尿の高齢者がいると思いますが、頻尿の方へのケアがほかの方へのケアの妨げになることもあるかと思います。頻尿にはさまざまな原因背景があります。そこを押さえてアセスメントすることで、解決策を模索していきましょう。
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そもそも頻尿の定義とは?
一般的な排尿回数は、一日4~6回、夜間は0〜1回と言われています。一日8〜10回、夜間に2回以上トイレに行く場合は頻尿の状態です。おおむね日中は1時間おきにトイレに行く。夜間3時間継続して寝ることができないと頻尿といえるでしょう。
頻尿の種類とメカニズム(原因)
過活動膀胱
症状(排尿頻度)により定義されている疾患です。
排尿回数など把握できている場合
判断基準として「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」があります。
神経因性頻尿
神経の異常が原因で起こる膀胱機能の障害です。尿をためたり(畜尿)出したり(排尿)する信号がうまく伝えることができなくなった状です。
心因性頻尿
精神的な不安やストレスが原因となって起きる頻尿で、気持ちが落ち着いているときはトイレのことが気にならないことが特徴。
膀胱炎
外部から膀胱内に大腸菌などの腸内細菌が尿道を通じて入り込み、増殖することで炎症が引き起こされます。
前立腺肥大
前立腺は尿道を挟む形で男性にのみあります。その前立腺が年齢とともに大きくなり、尿道が狭くなり尿の勢いが弱くなる。残尿感があるなどの症状が出ます。
頻尿に対してのアセスメント
アセスメント様式の例
引用:日本泌尿器学会
・このように、「いつ」「どのくらいの量」を1日単位で表にしていくことで、いつ多いのか?が分かります。高齢者であれば、アセスメント表に多い時間帯の、本人の精神状況や周囲の状況なども記載していくと、より「頻尿」の状況を客観的に見ることができます。併せて、尿の「色」「臭い」も記載しておくと疾患の早期発見にもつながります。
各頻尿に対しての対応策
神経因性頻尿
まずは泌尿器科に受診をしましょう。そこで「尿を貯める機能」に障害がある場合には投薬、膀胱訓練、骨盤底筋訓練、干渉低周波治療(電気刺激治療)、仙骨神経刺激治療(仙骨神経付近に電極を埋め込んで、皮下にはペースメーカーを埋め込んで、膀胱に関連する神経を刺激することにより膀胱の過敏な収縮を抑制する治療)などがあります。
心因性頻尿
トイレに行くことが気になって何回もトイレに行ってしまいます。例えば、試験前・デート前・講義前・プレゼンの前等々「緊張」している状態が続いている状態にあります。安心できる環境整備や関わり、合わせて心療内科や精神科への受診も検討していくといいでしょう。
膀胱炎
まずはかかりつけ医に受診し尿検査を受けるようにしましょう。膀胱炎と判断されれば抗菌薬の投与が主な治療法となります。再発しやすく、発見が遅くなると腎盂炎になる可能性もあるため、日頃から1000~1500㎖の水分摂取を行い、尿と一緒に膀胱内の菌を排出する・陰部の清潔を保つように心がけましょう。
前立腺肥大
まずは泌尿器科に受診しましょう。対応には薬物療法と外科的治療があります。日常生活でできる対応策は、「尿を我慢しない」「便秘にならない」「適度な運動をする」「適度な水分を摂る」
事例で学ぶ
アセスメント様式の活用
このようにアセスメント様式を可活用することで職員の動きと、当事者の動きの関連性を客観的に見ることができます。
分析しよう
今回の場合は、職員が排泄介助をしているときに頻尿になっている事が多く見受けられます。
では、排泄介助をしているときの職員の動きはどの様な雰囲気でしょうか?
忙しそうにしてる可能性が高いですね。周りの人がバタバタしているとき、何が起こっているか何かしないといけない?と感じている高齢者はどの様な精神状況になるのでしょう?
対応策の検討
排泄介助の職員が行くときに、本人に、今から職員が何をするのか、その時にその方にどうしてほしいのか(役割)を担ってもらう声掛けをします。
再アセスメント
上記の対応やその他の対応をして、実際に改善されているかを客観的に判断する必要があります。
再アセスメントの結果、排尿の回数が上がり、時間もまちまちの場合は、排尿が実際にあるのか?どの程度排尿量があるのか?(量を測ることができなくても、音を指標にする)などの情報を元に看護師と相談し、受診するなどの対応も検討できます。
まとめ
ここまで頻尿の種類・原因・対応策を見てきました。たくさんの種類・原因・対応策がありました。私たち介護職員はその方の日常生活に密着しています。排泄ケアでたくさんの情報を持っています。24時間の排泄状況やその際の周辺状況を記録することは容易ではありませんが、「頻尿」は本人も介護職員も大変な思いをします。チームで連携し情報収集をして、医療職とも上手く連携していくことが必要です。今回は「頻尿」という限られた排泄ケアについて解説してきましたが、今後排泄ケアをはじめあらゆる介護についての情報発信をしていきますので、プロの介護職員を目指す方はぜひ今後も読んでください。